皆さん、こんにちは。大学で化学を専攻している、カモンワカモン学生編集員のサハラです。
私は、将来を考えていく中で、自分の生まれ育った地域の企業のことも知っていこうと思い、編集員に応募しました。
今回は、島田市で手持ち花火を製造し、花火業界で広いシェアを誇る井上玩具煙火株式会社さんを訪問しました。
大学で学んだ化学反応は同社では使われているのか?企画開発室長の井上さんにインタビューし、商品開発におけるこだわりのお話を伺いました。また、実際に花火の体験をさせていただきました!

人々を魅了する花火の歴史と、 井上さんの手持ち花火に対する想い
もともと火縄など武器に用いるものとして日本に伝来した火薬。
これを外国の商人が駿府の徳川家康に花火として献上し、広まったことが始まりと言われています。
このように「火薬」は人を殺めるものから、人々の時間や空間を楽しませる「花火」に使われるようになりました。
「花火」は日常に欠かせないものではありませんが、花火があることで一緒に過ごす人との時間や空間がより印象的なものになると井上さんは話します。

家業を継ぐために花火業界に入った井上さんは、日本の花火市場が他国の花火で埋め尽くされ、国産の花火が希少なものになっている現状に驚かれたそうです。
そこで「従来とは異なる、花火の見せ方や魅力があるのではないか」と考えた井上さん。国産の花火の強みとして従来の量産型花火のイメージを一新し、パッケージをシックなデザインに。大人が手土産として送りたくなるような「プレゼント」の価値を持つ花火として「義助(よしすけ)」を開発しました。その後も様々な商品開発を手掛けています。


井上玩具煙火さんの製品へのこだわり
炎色反応でつくるこだわりの「色・火花の散り方」
火花の色は用いる金属粉によって決まり、これを「炎色反応」といいます。
炎のもともとの色との兼ね合いを考慮し、色を表現していくそう。特に炎の色とは反対の「青色」を表現するのが難しいと井上さんは言います。
そこで、「火薬の色の違いを体験できるキット」を他企業と共同で開発。子どもたちが、楽しみながら「炎色反応」について学ぶ機会を提供したいという思いが込められているそうです。

また、色の表現だけでなく「火花の散り方」にも様々な種類があるそうです。
手持ち花火に入れられる火薬の量は法律で定められており、その中でレシピを作っていきます。色とその光の散り方のパターンから自身の理想(花火らしさ)を追求していきます。
既存の評価にとらわれない、逆転の発想からの改良
同社の手持ち花火は、「持ち手が長く安全である」という評価をうける反面、「長すぎて扱いにくい」という声があったため、安全に配慮しつつ多くの人が楽しめるような改良をしたそうです。
また、もともと「1本で2分30秒燃焼する」と燃焼時間が長いという点でも評価をうけていましたが、忙しい現代人や飽きやすい子供でも楽しめる、満足感を損なわない適切な長さの燃焼時間になるよう調整を行ったそうです。

常に挑戦的で、衝撃を走らせるようなものづくり
同社では、国内トップシェアを誇る手持ち花火メーカーとして、「常に挑戦的で、衝撃を走らせるようなものづくり」を心がけているそうです。
国産の花火を提供することに強くこだわりを持ち、新しいアイデアで、花火を利用するお客様に「わくわく」した感情をもたらすことを意識されています。
「環境に優しい花火」の開発
現在でも「花火は環境や体に悪影響を及ぼすもの」というような先入観をもつ人が少なくないそうです。
同社では、そのような考えを払拭するべく、「環境に優しい花火」の開発に力をいれています。花火産業は、特にロケット産業やその他の産業から規格外となった酸化剤を再利用するという側面もあります。また、廃棄物の削減にもしており、花火の下地となる「木の粉」は木材を切る際に出たものを使用しているそう。
伝統を守りながらも、新しい技術やアイデアを取り入れ、花火を使うお客様がより安心して楽しめる手持ち花火の開発を追求されています。
実際に花火の体験をさせていただきました!
Uターンスパーク

これは体験させていただいた花火の1つで、Uターンする花火です。
燃焼速度の異なる金属粉を塗り重ねることで、一度離れていった2色の火花が同色になり、向かい合って燃え進んでゆきます。
写真は同じ色になったあとのものです。
花火屋の名物団子

こちらは贅沢に2本使いさせていただきました!
お団子の形をした花火です。
下地が球体の木の粉なので、発火点が円状になり火花の散り方も「花」が咲くように、変化してゆきます。
ピンク色と緑色の炎がとてもきれいです!
同社ではオンラインショップも運営されているそうです。興味のある方はお手に取って体験してみてくださいね!

取材を終えて
今回の取材では、商品開発における井上さんの花火に対する想いや、商品に込められたこだわりを伺い、実際に井上玩具煙火さんの手持ち花火を体験させていただきました。
お客様に楽しんでもらえるような工夫や、それを実現するまでの道のりに関する井上さんの考えから、「自分が納得するまでとことん研究する大切さ」を学ぶことができました!

