
伝統はつくりあげていくもの。伝承は語りついでいくもの。
『決まった人生だけど途中でやめられない。』
大正亭6代目社長村松さんは開口一番にこう言った。あとつぎとして任されたからには、やめるときは店をたたむときか後継者に渡すとき。今でこそ、息子さんと切り盛りする日々であるが、その子たちが育つまでは絶やすことなくひたすら守り続けてきた道がある。
守り続けるとは保守的になるのではなく、時代の流れを汲みとり、お客さまが今なにを求めているかを考え、試すことをくりかえしながら、維持しつづけること。

例えば、新商品の開発。
スタッフみんなでアイデアを出しあい、完成した新商品は、『すぐ食べられるローストビーフ』。
これまではパウチしたものを湯せんで戻して食卓にならべるのが主流だった。しかし時代の流れとともに、核家族やおひとり住まいのかたが増え、少量でパッケージを開けたらすぐ食べられるようなスタイルに。
今ではローストビーフに野菜をつけあわせたワンセットが大正亭の主力商品?

弱みは強みでもある
代表の村松さんは、色の見分けかたに特性があるそう。一般的に見える色が100%だとすると、村松さんは色によって30%や60%の割合で見える。つまり普段、人が見えないものが見えることで、発見しづらいこともすぐ発見できるのだ。
そんな特性は生活の中で活かすこともできるが、仕事では見分けがつかないときもしばしば。そう聞くとハンデのように感じるが、みんなそれぞれ得意不得意があるように、補いあうことで問題なく仕事はすすむ。

ヨッ!タイショウ!!
人もうらやむ、歴史ある星のもとに生まれた村松さん。人知れない苦労があると思うが、明るくポジティブに堂々としているさまはまさに『タイショウ』。
そこで愚問を投げかけてみた。
- もし、この仕事に就いていなかったら、どんな職に就きたかったですか?
-
漁師!
即答だった。肉屋の店主が魚?!ボキャブラリーのある回答に笑みがこぼれた。理由をきくと、「狩が好きだから」。もともと釣り好きがこうじて、投網(とあみ)の免許も取得されたそう。
- 今の仕事を息子さんへと引き継がれたあと、なにかしてみたいことはありますか?
-
これまでは、先代から引き継いだ仕事を守りつづけてきたけど、今度は自分らしい何か、例えば生肉をあつかう以外の商売をやってみたい。
人生100年時代。ちょうど折り返し地点であり、新しく生まれ変わる年でもある村松さん。これからのことを考えている姿にバイタリティを感じた。



執筆者: 本田秋江 (C’mon Wakamon編集部)
生まれも育ちも嫁に行っても藤枝市。高校卒業後、進学のため上京。
学生時代はディズニーシーの立ち上げや造形製作に携わる。
新卒でNHK入局。番組CG制作を担当。その後、ゲーム会社にてキャラクターデザイン製作に携わるも、30歳を機に帰静。
CM制作ディレクター、雑誌の編集デザイナーを経て、30年続けているヨガの勉強をしに渡印。インストラクターの資格を修得。
IT企業や広報を経て、2017年「クリエイティブスタジオ赤飯」創立。事業内容は広告・パンフレット等、紙媒体を中心としたデザイン製作。
趣味はヨガとポタリング。
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