石田缶詰(株)で製造するレトルト食品のほどんどがOEM商品です。しかし会社ホームページを事前に拝見し「キャンプカレーの具」という自社ブランド商品が存在することを知りました。取材で伺ったときも打ち合わせのテーブルの端に「キャンプカレーの具」のパッケージが置かれてあるのに気づきました。
「具だけですよ。ルーはありません。」
そう説明を受けて少し考えました。そして『これはすごい商品ではないか』とジワジワ理解していきました。なんて斬新で新鮮な発想なのでしょう。色々なシチュエーションで活用できる新しい考え方の商品だと思いました。
「好きなルーを使って、お好みのカレーが出来上がります。」
カレーに限らず、シチューにも、具沢山スープにもなります。使う人のアイデア次第で色々な料理になりそうです。もともとは「ママカレーの具」として忙しいお母さんのために誕生した商品でした。野菜を切ったり煮込んだりという下ごしらえする時間を短縮できるからです。やがてキャンプブームが到来し『石田缶詰(株)の「ママカレーの具」がキャンプをするのに良い』という声が寄せられるようになりました。少ない荷物、少ない手間で美味しい夕飯を考える、というのは確かにキャンプにうってつけです。
単なる既製品ではなく、これを使って自分の食べたい料理に仕上げていく《半セルフメイド品》という印象を持ちました。これを使ってどんな料理にしようか、どう楽しもうか、と考えることも楽しくなる商品です。
社会のニーズが「モノ」から「コト」へ変わっていると耳にします。食文化の移り変わりについて石田社長も「食べる食品(モノ)から生活を豊かにする食品(こと)」へ変化しているとおっしゃっていました。「キャンプカレーの具」はまさに食を楽しむ《こと》の商品です。
今から10年前、若い社員も含めたメンバーで自社ブランド委員会を発足しました。OEM商品と類似した商品はNGという厳しい条件のもとに誕生した初の自社ブランド商品は「カレーの具」というアイデア商品でした。一般のレトルトカレーと間違われないよう、またスーパーなど店頭に並んだ時の見え方など、初めてデザインするパッケージにも苦労されたそうです。こうして「ママカレーの具」として商品化され販売がスタート。数年後に「キャンプカレーの具」という商品名で改めて販売が始まりました。
新商品開発には全社員のアンケートを取るとお聞きしました。自分の声が商品開発に影響する、自分のアイデアが商品になる、仕事の手応えをはっきりと感じることができ、仕事をしていく上でこれほど嬉しいことはありません。
社会のために何かしたい、役に立ちたい。未来を担う若者の皆さんの胸に秘めたその想いを石田缶詰株式会社で実現させて欲しいです。
執筆者:武田宗徳(C’mon Wakamon編集部)
藤枝生まれ藤枝育ちの二児の父。20年ほど続けてきたサラリーマン生活に終止符を打ち、現在は執筆業を中心に活動している。
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石田缶詰株式会社
わが社は、全社員が経営とオリジナル商品開発に積極的に関わることを目指し、ただ働くだけで無く夢や目標を実現し、全社員が仕事と会社を誇れることを第一として取り組んでいます。又創業より培った食品保存、衛生管理技術を活かして、他社との共同開発により宇宙開発プロジェクトに参画し、JAXA認定を受けた「宇宙日本食」を製造しています。 -
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