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文学館のあるまち「藤枝」より。若者よ。いまこそ本に学ぼう!人生を豊かにするお薦めの1冊

 藤枝市の蓮華寺池公園内には、郷土博物館・文学館があることをご存じすか?移ろいゆく自然を感じながら、郷土の歴史・文学・文化に触れ、親しむことができる場所です。そんな素敵な空間がある藤枝市とご縁がある私たち。人生の先輩たちから「お薦めの1冊」や、本の選び方・楽しみ方、読書のコツなどを教えてもらい、心を豊かにするチカラを養いましょう。

目次

読みたい本

 仕事柄「本は読みますか?」とお客様に尋ねることがあります。

 「本は読まないんですよ」という方が予想以上にいらっしゃいます。「漫画とか雑誌くらいで…」というお返事もよく聞きます。

 まわりの人たちは「本は読んだ方がいい」「読むべきだ」と言います。本を読むのが苦手なあなたは、ますます「本を読まなければ…」と考えてしまうでしょう。

 読書というのは本来娯楽であり、楽しみの一つです。まわりに強く勧められたり、自分の内に生まれた義務のようなものを感じたりして、半ば強制されて読むようなものではありません。そんな読書は苦痛を伴うだけで、かえって本が嫌いになってしまいます。

 私が小学生の頃、クリスマスの朝、枕元にプレゼントが置いてありました。包みを開けてみると昭和初期の名作文学のハードカバー本でした。大人になった今なら読めるかもしれませんが、私はそれを未だに読んだことがありません。他の人が勧めてくれた本や貸してくれた本もほとんど読めていません。

 本は自らが読みたくなって読もうとしなければ読めないものだと思うのです。

 映画や音楽と違って、読書は自らの意志で進行させていきます。少しパワーもいるし、少し面倒だと感じるところもあります。あなたが今読んでいるその本は、そのパワーや面倒臭さを上回るくらい面白い本、というわけです。

読みたい本だけ読めばいい、と私は思います。それがライトノベルでも漫画でも雑誌でも。読んでいる本がつまらないなら、潔く読むのをやめて、次の面白そうな本を読めばいいです。

 そうして早い段階で、時間を忘れて夢中になって読み進めてしまうような面白い本や、その後の人生を変えてしまうような衝撃的な本に出会ってもらえたら幸いです。

「読みたい本
武田宗徳(C’mon Wakamon編集部)

必読書!夜読まないでください。興奮して眠れなくなります(知的な意味で)

星を継ぐもの (創元SF文庫)
著者/ジェイムズ.P.ホーガン
出版社/東京創元社
2001夜物語
著者/星野之宣
出版社/双葉社

 ジェイムズ.P.ホーガン 「星を継ぐもの」 SFの傑作です。

 月で見つかった推定数万年前のミイラから始まって、人類のルーツに迫るミステリー調の内容にぐいぐい引き込まれます。約40年前に執筆されたとは思えない科学的な描写は2023年でも色褪せていないとおもいます。学生時代に読んでから何度も読み返しましたがそのたびにおもしろいです。

 また、マンガですが星野之宣 「2001夜物語」も大変おもしろいです。

 宇宙の深淵を探索する物語を中心としながら旧人類の絶望と孤独、新人類の旅立ち、人はどこからきてどこへ行くのか。そんな人類の葛藤を緻密な描写でリアルに描き出した何度読んでも感動するドラマです。

 読書のコツですが、一字一句を読まずに流し読みすることです。

 慣れてくるとイメージがわいてきます。それが映画のように動き出して音が聞こえてくると本当の読書の面白さがわかってきます。 読書のコスパとタイパは最強です。他の人の人生をたった数時間しかも数千円で会得することができます。本を読まないという選択肢はないとさえ言えます。「星を継ぐもの」の続編3部作「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」「内なる宇宙」がありますので是非ご一読くださいね。

必読書!夜読まないでください。
興奮して眠れなくなります(知的な意味で)
 シンギュラリティ太田

人生を豊かにするお薦めの1冊

NHK「100分de名著」ブックス 福沢諭吉 学問のすゝめ
著者/齋藤孝
出版社/NHK出版

 もっと早くに(若い時に)「学問のすゝめ」をきちんと読んでおけばよかったなと思わせた本が、今回お薦めしたい『NHK100分de名著ブックス「福沢諭吉 学問のすゝめ」斎藤孝著』です。

 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず・・・。」

 なんだ知ってるよ。と多くの人が知っている明治の初期のベストセラーです。

 しかし、よくありがちなパターンとして、「存在は知っているけども、読んだことはない。という人が多いのが残念至極」と斎藤孝氏が書いていますが、まさに私もこの残念至極の状態の一人でした。岩波文庫版だったと思いますが、手に取ったものの、当時の文語体を私たちが読み進めるのは大変であり買うまでには至らなかったと思います。

 斎藤孝氏は「声に出して読みたい日本語」(草思社)で有名な静岡県生まれの明治大学文学部教授で、時々テレビ出演もなさる方です。知っている方も多いと思います。お薦めの本は、Eテレ番組の「NHK100分de名著」にて、2011年7月に放送された「福沢諭吉 学問のすゝめ」のテキストを底本として一部加筆・修正し、あらたに第4回放送の対談と読書案内、年譜を収録したものです。

 とても平易で読みやすく面白く解説されています。私自身、会社満期の間際に読んだ本ですが、「独立自尊の道を歩め」と示唆も多く、今の生き方に影響を受けています。

「人生を豊かにするお薦めの1冊」
 勝右衛門(C’mon Wakamon編集部)

本には文字だけじゃない楽しみ方がある

山本果林さん
(特別養護老人ホーム高麓)

 私は読書が好きで、いつもいろんな本に興味を持ち、休みや仕事の休憩時間等に色々と読み進めています。

 そんな私がおススメする本をご紹介します。

『100の思考実験:あなたはどこまで考えられるか』
著者/ジュリアン バジーニ 翻訳/向井 和美 出版社/紀伊國屋書店
 ジュリアン・バジーニ長い本が苦手な方にお勧め。友達と共有して楽しむこともできる本。読むだけでなく、考察して議論して…と楽しみ方が広がります。目次を見るだけでも面白く、1ページ目から読まなくとも好きなテーマを選んで読む事もできる本です。思考実験のテーマは、「心を持つとはどういう事だろう?」「公平さとは何だろう?」といった哲学的な内容ではあるが、ストーリー仕立てで読みやすい。全部読もうと意気込むと徐々に嫌気がさすので、自分に合ったテーマを読むことが大事です。その時期、その状況で、自分の考え方や思考回路は変わるので、時が経ってから同じテーマをもう一度振り返ってみるのも面白いかもしれません。私は、この本を、長編小説の合間に読んで、気分転換として活用しています。

『実験4号』
著者/伊坂幸太郎・山下 敦弘 出版社/講談社
 本の楽しみ方が分からない方にお勧め。本の新たな一面を発見できる「映像×音楽×本の内容。このコラボレーションのきっかけとなった「Theピーズ」の名曲『実験4号』に捧げる映像と本は、それぞれ山下敦弘と伊坂幸太郎が手掛けているものです。伊坂幸太郎が描く小説は、実在するロックバンド「Theピーズ」をモチーフに描かれたSF。読みおわった後は、伏線回収のスカッと感と、様々なモヤモヤが満たされ飽和状態を味わえます。日常離れした世界観の中で寄り添ってくれる言葉は、私たちの日常に生きます。「映像×音楽×本」自分が手に取りやすいジャンルから入ることができるのも、本をいろんな角度から興味を持つきっかけになった本です。

『AX』 
著者/伊坂幸太郎 出版社/KADOKAWA
 恐妻家の殺し屋が主人公という現実離れした設定にも関わらず、読みやすく、ものすごく身近で心温まる内容。そこには、非現実的な人物像の中の超日常的叙情があるのです。仕事の苦労、家庭での気遣い、これからの人生をどう選択するのか、日常の些細な悩みや幸せに共感します。

 
 そんな私の読書のコツですが、自分の読めるサイズの厚さの物を選ぶことが大事だと思います。
短編集が良いのか、シリーズ物が良いのか、推しのキャラクターが出来やすい小説が良いのか、私はその日、その時期の気分で、そのように本を選んでいます。

 また、私は作者の伊坂幸太郎という作家が好きで、どんな人柄なのか知りたいからあとがきも読みます。他の作家に影響を受けた話、別の作品にアイデアを引き継いだ話など、繋がりが見えてくるので、数珠繋ぎに新しい本を読んでいけます。

 皆さんもぜひ楽しく本を読んで新しい発見や知識を得る喜びを感じてください。読書は出逢いです。

本には文字だけじゃない楽しみ方がある
 山本果林 特養部 ユニット型介護課 副主任
           特別養護老人ホーム高麓

心で診る音

山の音
著者/大森 克己
出版社/プレジデント社

 写真家の本なのに写真が一枚も載っていないってどういうこと?? 

 そんな謎めいたフレーズが気にかかったあなたに是非読んでほしい逸冊がこちら。写真家大森克己さんにとって初の文章のみの単行本「山の音」。作者がこのタイトルにした理由には、人々の心をホッと和ませるような意味がある。

 2000年代の初めに山桜を撮影しながら低山を歩いていたとき、鳥の鳴き声や、風が木々を揺らしたりする自然の音に混ざって、街から学校のチャイムや自動車のクラクションなどの人間の営みの音が同時に聴こえて来たことに感動した体験が元になっているとのこと。

 本の内容は桜の木とは関係なく、作者にとってかけがえのない瞬間を、独自の視点で捉えたことが綴られている。

 田舎から出てきて都会に住まうみなさんは、日々、リアルな喧騒やネットからの情報量の多さにより、肉体的にも精神的にもストレスを感じていませんか? 普段、ストレスと感じてしまうようなことも、視点を変え、発想の転換をすることで、いつもと違った気づきが生まれ、置かれた環境を楽しむことができるのではないでしょうか。

「心で診る音
本田秋江(C’mon Wakamon編集部)

人生を変えるほどの衝撃を受けた本

 まず、大前提として本はなかなか読めないものだと思います。読書ほど、今で言う“コスパ”や“タイパ”が悪いものはないからです。お恥ずかしながら、私は学生の頃に一切(と言っていいほど)本を読みませんでした。

 しかし、出産・育児をきっかけに自分の世界が段々狭くなっていることに危機を感じて私は本を読み始めました。すると、あることに気づいたのです。自分の悩みや苦しみはだいたい他の誰かが経験していて、「1人じゃないよ」ということを気付かせてくれたのが本でした。今はネットとう便利なツールがありますがそれと違うのは、本は自分のペースで己と対話しながら読めることです。そして、ネットのように暗証番号を入力しアプリを立ち上げなくても、本は開けばすぐに異世界へタイムスリップできる感覚が心地よくて私は今、読書の世界にどっぷりと浸かっています。

運転者 未来を変える過去からの使者
著者/喜多川 泰
出版社/ディスカヴァー・トゥエンティワン

 そのきっかけを与えてくれたのが、喜多川泰さんの「運転者」という本でした。それまでに何冊もの本を読みましたが、人生を変えるほどの衝撃を受けたのがこの本でした。著者の喜多川さんご自身も若い時に本を読まない人だったらしく、“本が苦手な人でも読みやすく、読書の世界への入り口になる本を書きたい”という想いで執筆されています。ですから、非常に読みやすく人生に効く言葉がいくつも散りばめられているので、私はいつもメモを取りながら読んでいます。

 本を読もうと思うのは、何かに悩みつまずき、それでも前に進みたいと心から願ったときなのではないでしょうか。その時期がみなさんにいつ訪れるのかは分かりません。しかし、その時にぜひ喜多川さんの本を開いてみて欲しいなと思います。きっとあなたの背中を押してくれる一言に出会えると思います。

そして本を読む際は紙の本での購入をおすすめします。なぜなら電子書籍に比べて、自分の中に吸収される濃度がはるかに濃いからです。学生のみなさんには定価の本は高く感じると思いますが、人生を変えるほどの体験が千円台でできると思ったら高すぎることはないと思います。いざとなれば、ブックオフなどで安価に手に入れる方法もありますよね。

みなさんそれぞれが人生の分岐点に立ったとき、1冊の本との出会いで人生が変わることもあります。そんな経験ができるのが本の最大の魅力だと思います。そんな出会いが訪れることを祈って、今回は締めにしたいと思います。

人生を変えるほどの衝撃を受けた本
 望月優花(株式会社新村組)


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